ピーチ姫姫
「マリオ、それはいけないわ......っ!」
被ったものは性別、見た目を問わずピーチ姫に変異してしまうという異形の冠、それを本人に使用することへの好奇心に配管工は抗えなかったのだ。
異変はすぐに生じた。
クラウンを被せた部分からズブズブと忌まわしい音色を響かせ、彼女の端正に整った顔は見る間に溶け出し赤黒く冒涜的な肉塊へと変容した。
手足であった部分は幾千の触手へと枝別れを繰り返し、その一つ一つが獲物を求め漂い、胴体であった肉塊は面という面から、蓮の花托を思わせるほどに密集した無数の目玉が肉を裂き突出し、その視線を彷徨わせる。
ドレスは飽和した悍ましい肉に内側からビリビリに引き裂かれ、足元に溜まる地獄めいた液体により、桃色だったことをさせるほどに限りなく漆黒に近い赤に染っていた。
やがて慄然たる視線の束は1ヶ所に集中する。
肉塊の下部がブチブチと裂け、無数の刃物のような歯牙を覗かせる、底知れぬ深淵のような口腔がゆっくり嘲笑を湛える。
眇眇たる空洞から漏れ出した瘴気が肺の中を満たす。
「マンマミーヤ......(嗚呼......なんということだ......)」